2012年3月12日月曜日

■367回路による放射線計測(その3)

考察

というほどでもないですが、
366回路⇒367回路にすることで、低エネルギー側の改善がややみられました。
低エネルギー側限界ラインが150KeV⇒80KeVぐらいに拡がりました。
マントルの77.1KeV(Bi)は、ノイズスカートぎりぎり見えずという感じです。(^^;

今回のPRA測定画面を下に示します。「やさしお」を測っている時のものです。
左側中段のPulseWidth Hisotgramを見ると、2コブ状の分布になっています。
左側の山(約80μsec)ががノイズパルス、右側の低い山(約300μsec)が放射線パルスと思われます。その事から、核種スペクトル識別性能を上げるために、以下の3点が考えられます。

1案.2コブ山を互いに出来るだけ離すこと
2案.キレの良いLPFにすること(次数をあげる)・・・左コブを下げる
3案.更に低ノイズのアンプにすること・・・左コブを下げる

2コブ山を離す為には、チャージアンプの時定数をもう少し長めにして、下図の右側パルス山を右にずらす事になります。しかし、時定数を大きくすることでパルス振幅高が減じられ、フロアノイズに埋もれてしまう可能性があります。また、高放射線量環境では、測定限界を狭めることにも繋がり、むやみに時定数を上げることは得策ではありません。

上記2、3案を並行して行うのが良いと考えます。既存回路が、SN向上の為にブートストラップ回路を採用したり、OPアンプを3~4段重ねているのもその為と思われます。そう考えると、一連の361、366、367回路のようなFET1石+1OPアンプでは、性能向上の限界が近いとも考えられます。 しかし、シンプル回路でここまで来たので、もう少し粘ってみようと思っています。
乞うご期待・・・か?

2012年3月11日日曜日

■367回路による放射線計測(その2)

測定結果

測定は、367回路の出力をパソコンのマイク入力につなぎ、PRAというフリーのパルス頻度解析ソフトを用いることで、放射線パルススペクトルグラフを作成。それによって、放射線の核種とその強度を同定します。前回までの実験で、核種エネルギー値とPRAの出力値はほぼリニアであることが分かったので、直接、核種エネルギー(KeV)で表しました。

測定は、以下の5条件で行いました。

  0.測定時間は3600秒(1時間)とする。
  1.測定部屋空間
  2.マントルを近接させた時
  3.やさしおを近接させた時
  4.白河のホットスポットで採取した土を近接させた時

1.測定部屋空間

   測定結果 (測定時間:1時間)


           横軸は、核種エネルギー(KeV)、縦軸は頻度(パルス数)です。

 


  
2.「マントルを近接させた時

   測定結果 (測定時間:1時間)


                Bi(77.1KeV)が、ギリギリ見えそう?

3.やさしおを近接させた時

   測定結果 (測定時間:1時間)



                                                               

   測定結果 (測定時間:2時間)



4.白河のホットスポットで採取した土を近接させた時

   測定結果 (測定時間:1時間)



2012年3月10日土曜日

■367回路による放射線計測(その1)

 367回路とは?

366回路の限界を探るべく、更なる各部の最適化を図ってみました。

1) 初段チャージアンプNFB時定数
2) FET動作点
3) 2段目アンプの周波数特性

NFBの時定数を上げることで、ノイズ周波数成分と放射線パルス周波数成分を引き離し、その上でしっかりフィルターで切り取る方針の基、3PF⇒5PFに増やしました。
一方、FETの動作点を最適化するために、ダイオードを1つ追加しました。ダイオードをシリーズに並べる代わりに抵抗に置き換えることも可能と思います。
最後に、PRAのパルス巾頻度グラフから、2段目OPアンプの入力側の微分系時定数、NFBで構成される積分系時定数を最適化しました。放射線パルス信号巾は300μsec位なので、概ね3KHzのBPFを構成すれば良く、その計算値をベースに実験的に良いポイントを探りました。

シンプル回路ゆえ、部品を追加することは出来るだけ避け、回路定数の変更を主として行いました。以下が、367回路です。


この367回路のソース抵抗Rsの変化に対する、各部電圧(B、C、D点)を下のグラフに示します。
Rs≒10KΩ付近にノイズ変極点があるようです。横軸がソース抵抗Rs値、縦軸が電圧(V)です。


2012年3月9日金曜日

■ダイオードの有無の比較

ソース抵抗Rsを変化させた時のFET Vgs電圧の変化をダイオードの有無で調べてみました。
ダイオード無し回路とは、先の361回路図のE点、B点をショートさせた回路です。
結果を以下のグラフに示します。横軸はソース抵抗Rsの値(KΩ)、縦軸は電圧値(V)です。


ダイオード無しの場合、設定許容範囲がRsが約2KΩ~8KΩになります。Rsが2KΩより小さくなると出力信号がノイジーになり、8KΩを越えるとOPアンプの出力電圧範囲の下限を越えてしまいます。
一方、ダイオードありの場合は、Rsが4KΩ以下でノイジーになるものの、20KΩまで問題ありません。ダイオードがあることで、動作電圧がより設計値に近づき、Rs変化範囲に対して回路の動作範囲が広く取れるため、回路の再現性が上がります。

2012年3月8日木曜日

■ダイオードの役目とは

FETのソースに順方向に接続されているダイオードは、FETの動作電圧を設定するために設けたものです。まず、OPアンプ(差動アンプ)の、反転、非反転入力を同電位、出力も同電位という条件で動作点を求めました。非反転入力電圧(下図361回路C点)を電源電圧の1/2とし、出力(同図D点)も同電位とします。
FETのゲート電圧(A点)は、NFBに電流が流れていない(PDがパルス電流を流していない)時は、
電流が流れないので、A点電位=D点電位となります。
ここで、FETのVgsを-0.6Vと設定すると、ソース電位(E点)は、E点=A点+0.6V=D点+0.6Vとなります。OPアンプ反転入力B点をC点と同電位(=D点)とするためには、B点とE点間に順方向にダイオードを接続すれば、全体電位の辻褄が合います。 ダイオードをそのために入れました。

実際、回路を組んでテストしてみると、Vgs=-0.6Vは、ゲインが高すぎてかなりノイジーであることが分かり、更に最適点を実験的に求めてみると、Vgs=-2.4V~-2.8Vぐらいになりました。ソース電流は0.4mAほどです。実験で使った2SK246はBLランクで、Idssは9.8mAです。遮断領域に近いところになりました。 最適点は、ソース抵抗を20KΩ半固定VRにして、ノイズと信号強度の両面で両立するように抵抗値を可変して探りました。

結果的に、反転入力電圧が非反転入力電圧より0.1Vほど高いところで最適値になりました。
反転入力が高いということは、出力電圧は低くなり、これはFETのVgsを拡げる方向になるので、収束方向になります。つまり、最適値をOPアンプのDCオフセットを許容して決めたことになります。ただし、DCオフセットは次段のカップリングの際にHPFを兼ねるコンデンサで接続(AC結合)されるので、極端なオフセットでなければ問題ありません。(DCオフセットとは、C点電位(中点)に対するという意味です)

・・・という経緯で361回路が生まれました。
なので、このDCオフセットが許容範囲内であるならば、ダイオードも外せます。
逆に言えば、ダイオードを順方向にシリーズに並べ、最適電位にすべきという考え方もあります。いずれにしても、シンプルな回路で目的を達成させるのが当初のもくろみでもあり、ダイオードを外したときの動作点を実験的に検討してみました。

2012年3月5日月曜日

■業務連絡

閲覧者の皆様へ、

コメント欄に記入できるように設定しました。
なお、コメント投稿後は、管理人(私)が内容を確認して、公開する方式となっています。
コメント公開にすこし時間が掛かりますが、どうかご容赦願います。

よろしくお願いします。

2012年3月3日土曜日

■366回路による放射線計測(その3)

 PRAによるピーク出力値と核種エネルギーの関係

実験により得られた出力ピークと核種エネルギーの関係を調べてみました。
横軸に核種エネルギー、縦軸にPRAにより解析されたピーク値の関係をプロットにしました。
各点とも比較的綺麗に直線に乗りました。


■考察

というほどではありませんが、
366回路は361回路に対し、すこしスペクトルが鮮明になりました。
時定数が500mS⇒600mSと大きくなった事よりも、
PINフォトダイオードの等価出力インピーダンス(OPアンプ回路のRi)に対し、
NFB抵抗が100MΩ⇒300MΩに変更(OPアンプ回路おRf)したことよって、
全体のゲインが上がった事なのかもしれません。
500MΩも実験しましたが、あまり変化なかった感じだったので、掲載しませんでした。
解釈が変でしたら、ご指摘ください。